全国高等学校鉄道模型コンテスト「3度目の正直」を目指して
2024.08.20
夏は僕達にとって、文化祭と並んで日々の活動を発信する重要な大会がある季節です。
第16回全国高等学校鉄道模型コンテスト。
西新宿にある、新宿住友ビル三角広場にて毎年8月初旬に3日間かけて開催されるこの大会。
全国各地から170を超える高校が参加し、来場者は数万人に及ぶと言われる大規模なコンテストは、鉄道模型の甲子園とも形容されます。
海城鉄研はおよそ10年前から毎年参加し、過去には優秀賞や、西武鉄道からの企業賞を受賞するなど数々の実績を誇ります。
今年は、全ての参加校が出展するモジュール部門の他に、一部の参加校のみが出展する一畳レイアウト部門(以下一畳)に出展しました。
モジュール部門は横90センチ×縦30センチの広さで制作し、他校の作品と接続し一周繋げて展示するというもの。
一畳は、畳1枚分の広さに線路を一周させ、他校の作品とは接続せず単独で展示する部門のことで、今年は本校の他に8校が参加しました。
高校2年生4人で取り組んだモジュール部門では、静岡県の天竜浜名湖鉄道沿線の茶畑を再現し、見事奨励賞と企業賞としてタカノフルーツパーラー賞を受賞しました。
一方、一畳では、高校1年生6人を中心に、高度経済成長期の京浜工業地帯を題材に、神奈川県の鶴見線を畳一枚分の広さの世界に製作しました。
結果としては、事実上の最下位にあたる健闘賞に終わってしまいました。
しかしその裏には丸1年をこの夏のために捧げたストーリーがあります。
一畳の作品に隠された秘話を語らせてください。
実は、僕達がコンテスト、一畳に関わるのは、昨年に引き続き2年目でした。
昨年は中学3年生として、一畳の中心メンバーであった当時の高校1年生の人数不足を補うため、サポートとして製作に携わりました。
事実上の3位を受賞し、喜んだ一方、初めて全国という広いフィールドに立ってみて、感動を覚えると共に、大きなショックを受けました。
他校の技術力の高さ、熱意の強さ。僕達が鉄研に入部後経験してきたものでは到底語り尽くすことのできない、模型への強い思いに溢れた全国の作品を見て、今までの自分の世界の狭さにショックを受け、自分達に足りなかった技術力など、沢山のことを胸に突きつけられました。
しかし、そのショックはマイナスのベクトルのものではありませんでした。
昨年の大会終了後、まだ暑さが残るうちから題材地の議論、下見を行いました。
それと並行して、技術力の向上にも熱を捧げました。
先輩からの技術継承はもちろんのこと、書籍やインターネットを活用して最適解を求め、そして様々な模型展覧会に赴いて専門家に教えを乞うこともしました。
ですが、いざ制作をしてみると、そこまでしたのにも関わらず失敗の繰り返し。
でもここで諦めないのが悔しさをバネにした僕達です。
最優秀賞を目指し、失敗したときは、何のどこが悪かったのか、次はどうするべきか試行錯誤し、その失敗を成功に繋げました。
濃密な1年間は、こんな簡単な文章では到底形容することができません。
しかし、ただ漫然と模型に向き合っていたのではなく、熱意をもって。
そう、僕達が去年見た全国レベルの熱意を持てたのです。
人間関係にも苦労しました。
妥協が許されない精密作業において、意見の違いによって対立することは多々あります。
モジュールの何倍もの広さを持つ一畳は、チームワークや協力なしでは成り立ちません。
対立のたびに、譲り合い、相手を尊重する。簡単なようで難しいことでした。
一言で僕達の作品をまとめるならば、小さな失敗と成長の繰り返し、だと思います。
日常生活、人生においても失敗と成長の繰り返しがあることは度々実感します。
模型製作、さらには学校の部活動を通じて、このような貴重な体験をすることができて今思えば光栄なことだと思っています。
僕達にとっては、去年を凌駕する集大成に相応しい作品を作ることができました。
正直かなり自信を持っていたうえ、大会本番中にも多くの他校の皆様や来場者様にお褒めの言葉を頂きました。
一畳部門は山のある、自然情景を制作するのが主流なので、工業地帯というテーマを扱ったのは他校を含めて初めての唯一の取組だった故、かなり目を引く異色の作品でした。
実際、来場者様による人気投票では2位に輝きました。
これらも踏まえて、僕達は優秀賞、最優秀賞を受賞できるのではないかと期待に胸を膨らませていました。
最優秀を目指して1年間作ってきた自信作でした。
ですから、まさかの最下位という最終日の結果発表には悔し涙を流しました。
幸いなことに、僕達高校1年生には引退まであと1年チャンスが残っています。
例年、高校2年生はモジュールを制作するため、一畳は後輩に任せることになります。
つまり、今年の悔しさをバネにモジュールという、さらに広いフィールドで闘うことになるのです。
去年とはまた違う悔し涙を糧に、何が評価されなかったのか?主題はきちんと審査員に伝わっているか?詰めが甘かったところはないか?と振り返りました。
来年はどこを作ろうか、何を題材に取ろうか、その議論は既にメンバー間で行なっている最中です。
山あり谷ありの2年間を経て、さらに団結を強めた海城鉄研の、「3度目の正直」という言葉に相応しいリベンジにどうぞご期待ください。
酷暑の裏で、人知れず一つの文化部が熱い夏を送った、ということが共有できたら幸いです。
最後になりますが、活動を支えてくださった顧問の先生方、先輩・後輩方、その他応援してくださった全ての方にこの場を借りて感謝申し上げます。
(鉄道研究会 副部長)